本年度は、昨年度に実施した全国の市教育委員会に対する学校財務制度に関する調査結果の分析を行い、日本教育行政学会においてその成果を発表した。全体的な傾向として、第一に非常に多様な制度になっていること、特に人口規模による相違が顕著に表れていること、第二に学校財務制度のみ整備の状況が浮かび上がったこと、特に教育委員会、学校の権限が明確になっていないこと、また非常に制約されている状況にあること、第三に学校への配当予算の決定方法が確立していないこと、そのために学校の要望を聴取するよりも、機械的な配当がなされているところが多いこと、を指摘した。そのほか、まだ十分な広がりは見られないものの、学校の裁量により自由に使える予算措置をしているところもあり、その内容を整理した。アンケート調査により、学校財務制度の全国的な状況を把握することができた。そうした現状を踏まえ、年度の後半には、先進的な地域の学校財務、学校予算の実態に関する聞き取り調査を行った。訪問したのは、秋田県、山形県、宮崎県である。秋田県では、特色ある学校づくりのための予算配当がかなりまとまった額で継続して行われている。その活用の仕方は学校によりさまざまであるが、創意工夫の成果は見られた。山形県では、県の事業である「さんさんプラン」に関する実情の聞き取り調査を行った。市町村レベルでの特色ある取り組みがまだ十分には見られていないように感じた。最後に宮崎県では、学校事務の共同実施の取り組みの実情について聞き取り調査を行った。市町村の主体的な取り組み、共同実施を行うことによる新たな活動の可能性を見て取ることができ、先進的な取り組みとして非常に注目すべき事例であると評価できる。今後、こうした新しい学校財務の取り組みについて、更に事例調査を行っていく予定である。
|