本年度は、4つの地域の学校財務の実施について調査を行った。1つ目は、宮崎県の佐土原町における学校事務の共同実施の実態、そして宮崎市の小学校における学校事務の共同実施と学校経営のあり方である。佐土原町では、共同実施組織に学校事務の執行の権限、学校予算の執行の権限を広い範囲で委託しており、それにより学校の自律的な組織運営、予算の執行を可能としていることが分かった。宮崎市のある小学校では、学校の事務部門と教育部門との連携が密になされており、両者が協力して学校づくりに取り組んでいる実態を見ることができた。学校事務の共同実施による学校経営上の成果であり、学校改善を促進する学校財政制度のひとつのあり方として評価することができる。2つ目は、志木市における学校魅力化推進事業についてである。これは、学校への予算配当において、学校から魅力化事業の計画書を提出させ、それに対するヒアリングに基づき、配当額を決定しようとするものである。これにより一律の予算配当ではなく、学校の創意工夫が予算に一定程度反映することになり、学校改善を促す効果を持つものと思われる。3つ目は、横浜市の事例である。横浜市では、300万円の学校の特色づくり推進費が、各学校の一律に配当されている。この予算は各学校が自由に用いることができる学校裁量に委ねられた予算である。これは。学校が独自の予算編成を行ない、特色づくりに取り組むことを促すやり方である。横浜市では、学校裁量予算を配当していることから、積極的に学校予算の情報公開を行うように求めており、多くの学校がホームページ上で学校予算の概略を公表している。4つ目は大阪市の事例である。大阪市の特徴は、学校事務センターを設置し、そのセンターが各学校に対して学校事務の支援を行う体制が整えられている。学校には予算の編成、執行にある程度の自由が与えられており、学校の創意工夫により特色ある学校づくりを進めていくことが可能となっている。 4つの事例は、いずれもその取り組みが始まったばかりのものであり、その成果はまだ検証できる段階にはない。ただこれらの事例の地域では、学校が自律的にその組織改善に取り組んでいる。予算の編成、執行における学校裁量が重要であるということは明らかである。
|