本研究は、学校の自律性を高め、学校改善を促進する学校財政制度のあり方を探求することを目的として、第一に、全国の市における学校財務制度の現状をアンケート調査により明らかにするとともに、いくつかの自治体の取組みに注目して、事例研究を行った。調査の結果、全国的にみると、学校財務制度は、十分に整備がなされておらず、また校長の専決権を認め、裁量に委ねた予算配当もまだまだ少ないことがわかった。しかし事例研究で取り上げた自治体では、学校の裁量にゆだねる予算配当の方法や学校改善のための創意工夫を活性化するような取組みも見られた。事例研究で取り上げたのは、志木市、横浜市、大阪市、宮崎県の佐土原町、宮崎市の赤江小学校である。志木市、横浜市は、学校に対して特色づくりのための特別枠の予算配当を行い、その使い道を学校の裁量に委ねている自治体である。大阪市、宮崎県は、学校財務のための制度の整備に特徴のある事例である。大阪市は、学校事務センターを設置し、学校財務のための制度を独立させ、それにより学校を支援する体制を整え、また学校の裁量を尊重した予算配当を行っている。宮崎県では、学校事務の共同実施を行っており、市町村単位で共同実施を自律的行う体制になっている。佐土原町は、共同実施組織に予算や権限を委ね、共同実施組織の創意工夫を促し、それにより学校の自律性を高めようとしている。赤江小学校は、共同実施により、学校運営祖息を見直し、指導部と管理部との連携協力の体制を整備している。このように、学校財務制度を、学校の自律性を高め、支援するように組織化し、そのもとで各学校が、創意工夫によって特色ある教育を活発に行っていくことが重要である。
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