本年度の研究は昨年度からの研究活動が論文として成果の形でまとめることができたこと、また新たに調査の結果、二ヶ所で近世民衆教育関係史料を発見し調査活動に従事してきたこと、第三に昨年度発刊の単著『近世民衆の手習いと往来物』の書評、及び図書紹介を各学術雑誌に掲載された。また、近世往来物史料を入手できた。詳述すると、以下の通りである。 第1に近世民衆教育史研究の到達点を整理し、地域との関連で明らかにし、シンポジウム報告内容をもとに全国教育史学会誌『地方教育史研究』に掲載した。 第2に近世奈良町の宗門帳『大和国奈良南半田西町宗門御改帳』を宝暦12年から慶応3年までの105年間に80冊保存されている史料から人口・家族、子供の文字学習について分析し、共著『地域の教育の歴史』及び『奈良教育大学紀要』に投稿し掲載された。 第3に近世伊勢国飯高郡塚本村に寛政4年から25年余にわたり開設された寺小屋寿硯堂の門人帳『門弟衆名前帳』をもとにして、入門した子どもたちのライフサイクル、とくに退塾後奉公に出たもの等のその後の暮らしを詳述し、NHK学園編『古文書通信』に「手習いと奉公」として掲載された。他方『奈良教育史研究」に奉公に出て挫折した子ども・女児のライフサイクル等分析したものを掲載した。 第4に三重県名張市の中村家の寺子屋門人帳3冊の調査及び和歌山県橋本市の田中家文書のなかの近世手習い手本200点ほどの調査を継続中である。
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