平成16年度の研究実績は以下の通りである。 一、近世の伊勢国飯高群塚本村の寛政期寺子屋「寿硯堂」及び志摩国答志群鳥羽町の栗原亮林家寺子屋の門人帳にみる女児の学習とその後のライフサイクルの検討を行い、女児の学習が、その後の奉公・婚姻と深く関わって早期で短期間であることを明らかにした。 「近世後期、女児のライフサイクルの検討-寺子屋『寿硯堂』及び栗原家寺子屋の史料をもとにして-」と論文化して『奈良教育史研究』(2004年12月30日刊)に発表した。 一、幕末期、伊賀国名張群名張本町の中村権平家寺子屋の門人帳3冊をもとにして、名張群名張町及び近郊農村の民衆の子ども達が寺入りして手習い、読書、算盤、謡い、踊りなどを稽古していたこと、束脩と謝儀から交友内容と交友圏を明らかにした。とくに中村家寺子屋「栄寿堂」に残された能楽、謡曲手本類、乱舞入門帳から師匠中村権平の芸能に秀でた文人師匠の面を検討した。 「幕末期、伊賀国名張群名張本町の中村権平寺子屋の検討-寺子屋入門帳を中心として-」と論文化して『三重県史研究』20号(2005年)に発表予定である。 一、紀州藩伊那群赤塚村の大庄屋田中屋の文書のなかから、近世期の田中家の子ども達の手習い手本類を整理して、目録化した。田中家の子ども達の手習い手本類は師匠による自筆で100点余残されている。それらを整理して目録化にしたものを本研究報告書に発表した。 一、平成15年度に購入した近世期の子どもの手習い手本である往来物及び和書の書籍類70点余を整理して、書誌学的な検討をおこなった。往来物の分類、年代、形態、版元、作者、内容の概要と解説をまとめ、本研究報告書に掲載した。
|