研究概要 |
本研究は,医療・保健・福祉領域に主眼が置かれている高齢障害者支援の現状に対して,高齢障害者の「学習」の必要性と可能性を示し,具体的支援の方策を検討していくための基礎的調査研究である.本年度は,高齢障害者の活動制限と学習活動の継続性に関する研究を実施した.まず学習を阻害している要因を355名の在宅高齢障害者のデータより分析した.その結果,受傷/発症後学習内容が変化したと回答した者60%,変わらない24%,どちらでもない16%であり,学習が困難になったと感じている者85%(ADL自立群75%,部分介助群94%,全介助群98%)であった.また,18項目の阻害要因に対する回答パターンを数量化III類にて分析した結果,ADL自立群は「運動機能の低下」や「記憶・集中力の不安」のために「既存のプログラムを始めるための要件を欠いている」「自分の求めるプログラムがない」という制度的要因が,部分介助群は「送迎サービスがない」「場所を知らない」といった状況的・情報的要因の傾向が,全介助群は「何を学べばいいか分らない」「学習したいという気持ちにならない」といった心理・社会的要因が阻害要因の傾向にあることが明らかになった.つぎに,生涯学習センター,公民館,老人福祉センター,社会福祉協議会ならびに介護老人保健施設に勤務する学習支援者に対し,当該施設での高齢障害者の学習の現状と阻害要因について質的データを収集するためにインタビューを実施した.また,介護老人保健施設デイケア参加者30名に対し,活動制限の状態と学習ニーズに関する質的データを収集する目的でインタビューを実施した.これらの結果は,現在帰納的手法で分折中である.今後,継続的な理論的サンプリングを行い,高齢障害者の学習ニーズについて明らかにしていく予定である.
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