研究概要 |
本研究は、アメリカの進歩主義教育、ドイツの田園教育舎教育、イギリスの新教育など、いわゆる国際的な新教育運動の展開によって教師に求められる資質・能力が変化したことに着眼し、(1)その時期に「教職の専門分化」がいかなるかたちで進展していったか、また、(2)そのことによって「教育学の制度化」が具体的にいかなるかたちでなされていったかに関して第一次史料に基づいてその内実解明に迫ろうとするものである。なお、本研究のメンバーは過去6年間、新教育に関する共同研究を実施してきたが(平成14年3月科研研究成果報告書参照:新教育運動おける「共同体」形成論の出現と「学級」概念の変容に関する比較史的研究)、当該研究テーマの初年度にあたる平成14年度は、それらの研究蓄積をふまえて研究討議及び第一次史料収集などを行った結果,以下のような研究成果を得つつある。 (1)アメリカにおける「教職の専門分化」過程と教育学教育の出現を概観するため,アメリカの新教育運動期における教職をめぐる論点を整理し(教職の専門性・専門職性に関する議論-教科専門重視か教職科目重視かという議論の中で教育現場からの要求として教職の分化が進行),師範学校での教師教育がいかに展開されたかを解明しつつある。 (2)ドイツ新教育と教員養成の関係をテーマに掲げるかという視角から,ワイマール期の新教育ネットワークに教員養成機関を位置づける必要があるという視座を明確にし,青年運動の理念を導入しようとしたアルトナ教育アカデミーの実態,とりわけヴエーニガーやヤナシュなど新教育に関与していた教授陣や彼らの講義担当科目,学部組織などを解明しつつある。また,ドイツの大学において教員養成のシステム化の中心思想の内実を解明しつつある。 (3)イギリス新教育運動期に新教育運動を推進しつつLondon Day Training Collegeの職員としてその改革に影響を与えたNunnとその後のHadow Reportの内容がいかに関係性があるかということを検証するため第一次史料を収集し,その思想的関連性の内実を解明しつつある。
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