1. 聴覚への依存は、コミュニケーションモードによって決まってしまうのかを明らかにするために、聴覚の利用できている成人と聴覚利用できていないで読話を中心に学習してきた成人を対象として聴覚への依存度を検討した結果、聴取能力、発音へのフィードバック、コミュニケーションヘの全般的流暢さにおいて、聴覚利用群の急激な発達が認められた。このことから、たとえ言語習得途上に失聴した成人であっても、聴覚活用の姿勢と不十分ではあっても聴覚からの情報が入っているとでは全く違う様相を呈することが推察された。 2. 言語習得途上に人工内耳の植え込みをした幼児の場合、聴覚口話のモードでは、手指を利用していても聴覚だけに依存するようになった子(当初手指によるコミュニケーションをしていたが、2年後には手指は全く使用せず聴覚だけでコミュニケーションをする子1名)、手指と聴覚の併用にあるがどちらかというと聴覚によっていると思われる子(1名)、手指と聴覚のちょうど併用状態にある子(1名)であり、キューを含む手指併用では、聴覚も利用しているがどちらかというと手指によっていると思われる子(3名)、聴覚と手指のちょうど併用(1名)であり、発音も不明瞭であった。こうしたことから、コミュニケーションモードの違いによる影響は、本人がおかれているコミュニケーション環境とそれを支える基本的な言語御とが関係すると推察された。しかし、いずれも場合も、時間経過と共に音青話量が多くなり、音声と手指の併用期に入り、相手に応じた使い分けができるようになり、言語の概念化がそれを側面から支えているものと推察された。
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