研究概要 |
1,アンケート調査より:聴覚障害児教育においては、情報受容のための手段として手指等を利用している現状にある。現在聾学校の幼稚部で約6割、高等部では9割が手話を導入している。一方、文部省の調査では、人工内耳装用児の半数は、聾学校幼稚部に在籍している。こうした状況下では、人工内耳装用児のコミュニケーションモードはどうあればいいのかさらに検討を要する。 2,コミュニケーションモードの変容について:昨年度以降、コミュニケーションモードに変容が見られた幼児は、「手指メイン」の子3名中2名が「手指主-聴覚従」へ移行した。また、「手指主-聴覚従」の子2名中1名が、「聴覚主-手指従」へ移行した。また、「聴覚主-手指従」の子1名は、「聴覚メイン」へと移行した。この幼児達の語彙能力や言語能力もそれに比例して向上していた。しかし、言語能力や語彙能力が経年ほどには、のびていない幼児では、コミュニケーションモードの変容は生じていなかった。特に、音韻レベルの概念が発達していない幼児の場合、言語能力の向上が十分ではなく、コミュニケーションモードも変わることがなかった。 3,言語力と構音能力について:言語力の向上に対応して構音の発達が認められた。しかし、一部の音(か行やは行など)の音は、刺激頻度を早くすることによる改善の方が大きかったと思われた。 以上のことから、コミュニケーションモードの違いによる影響は、本人がおかれているコミュニケーション環境とそれを支える基本的な言語能力とが関係すると推察された。なお、今後、指導時間の長さや家族の協力体制などについても検討を要する。
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