今年度の調査研究は基幹産業のなかでも鉄鋼産業を対象とした。調査対象先は鉄鋼最大手新日本製鐵の君津製鉄所を中心として、中手の大同特殊鋼に対してそして産業技術短期大学に対してインテンシヴな調査研究を行った。現在、取りまとめ中であるが、一部内容を紹介しておく。なお、今年度は企業と教育現場の密接な連携のもとで人材育成を展開しているドイツのヂュアルシステムについて自動車会社と鉄鋼会社を調査することができた。最終的な報告書に反映させていくつもりである。 新日鐵君津製鉄所の労働力構成は所員数3657人のうち、スタッフと操業・整備つまりホワイトカラーとブルーカラーの比率は2:8の割合である。スタッフの特徴として一般職よりも管理職が圧倒的に多くを占める。スタッフは技術者と事務系のホワイトカラーで占められている。高卒のスタッフは多くはない。大卒は入社後早い段階で管理職になるため、スタッフはほぼ管理職で占められている。一方、現場に目を移すと操業と整備つまりオペレータとメンテナンスマンに大別されるが、その割合はオペレータ7に対してメンテナンスマン3である。最近の特徴としてメンテナンスマンの比重が高まっていることに留意する必要がある。監督者については主任の占める比率は33%と3人に1人の割合でこれも高い。要員合理化が進むなかで、工場に配属されている技術スタッフが決定的に重要な役割を果たしている。たとえば、毎月の要員設定については事務サイドが数字を決めて、技術者は機械合理化、作業の仕方、配置の仕方等を練るのである。従来現場労働者が要員削減を積極的に展開していたのであるが、今日要員削減案の枯渇、削減による作業スパンの拡大等により現場労働者は消極的となっている。
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