平成16年度では、(1)企業内の技術者教育機関の調査として産業技術短期大学及び附属人材開発センターへの聴取り調査と資料収集、(2)雇用・能力開発機構の職業能力開発大学校(ポリテクカレッジ)と雇用職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)への聴取り調査と資料収集を行った。 第1に、鉄鋼業における中級技術者不足への対応策として設立された鉄鋼短大は、80年代に入り、産技短大へと再編されて、派遣生は100名を割り込む。90年代に入ると、石油危機直前の130名に企業派遣生は復活する。しかし、90年代半ば以降再び減少して、95年にはついに100名を割り込み、2000年には50名を、04年には27名に減少している。こうした変化は、鉄鋼企業にとって産技短大派遣の目的を大きく転換させることになった。ブルーカラーからホワイトカラーへと職種転換をはかるための教育から、中堅労働者の育成のための教育へとシフトしていることであり、今ひとつは、今なお高度な熟練を必要とする鉄鋼労働に分厚い技術教育が用意されていることを意味している。 第2に、ポリテクセンターでは、「コース別能力開発体系」の開発・構築によって、受講生は必要とする技能・技術や知識に応じて段階的・体系的に学べることが可能になっていることである。ポリテクセンターは開講する「能開セミナー」のレベル区分によって、差別化がはかられており、在職者の教育ニーズに即応している。一方、ポリテクカレッジは「エンジニア」「テクニシャン」という職種だけではなく「研究補助員」「専門スタッフ」「メンテナンスマン」など多様な人材を供給しているのであり、高専や大学が果たしている役割とは明らかに異なる。もっとも重要なこととしてポリテクカレッジは「生産現場のOJTを教育の場に置き換えた教育システム」へと教育スタイルの転換を図ったことである。
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