1.電機産業では労働の二極分解が進んでいるが、それでもなお自動車産業に比して知的・熟練労働が一定の割合で存在している。従来、技能者と技術者の仕事内容が完全に分離されていた時代から、IT・情報化の進展に応じて次第に技術者の担当領域が広範囲にかつ上方に拡がりを見せていると同時に、技能者の仕事内容との重複領域が拡大している。そうした電機産業では技能者養成、技術者教育のいずれにおいてもOffJT方式の地位の高まりを確認することができた。 2.ライン労働とメンテナンス労働とに大別される鉄鋼生産現場における労働の変容に関して、その特質を明らかにした。ライン労働はIT・情報化の進展に伴って、監視労働が主流を占めている。そこでは経験的熟練の低下をもたらす一方で、新たな熟練が生起するがために最終判断はオペレータに委ねられている。鉄鋼業における教育訓練は、今なお高度な熟練を必要とするために手厚い技術、技能教育が用意されている。また、階層別教育、職能別教育いずれにおいても技術、技能教育との結びつきを強めているとともに、昇進・昇格と通信教育や国家資格とのリンクが重視されている。 3.これまで、OJTを中心とする企業内教育はわが国の職業教育の中核として位置づいてきた。しかし、IT・情報化の進展や労働市場の流動化等を契機として人材育成システムの転換が叫ばれ、公共職業訓練施設が期待されている。職業能力開発大学校では、「テクニシャン」「エンジニア」「専門スタッフ」などの人材を育成している。そこでは「生産現場のOJTを教育の場に置き換えた教育システム」が機能している。
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