児童・生徒と教師の「絆」や「関わり」が強調され、そうした関係性の中で全人教育がなされる教育=「日本型学校モデル」は、近年、学校の肥大化や教師の加重負担という点から批判され、「学校スリム化」「学校機能縮小論」という議論が登場してきている。本研究では、「日本型学校モデル」のメリットとデメリットについて検討し、その可能性を考察することを目的とした。 平成14年度の研究の中では、「日本型学校モデル」が必ずしもわが国独自の特徴ではなく、多様なニーズを抱える子どもの増加に伴い、学校がますます子どもに総合的に関わらざるを得ないことが明らかになった。したがってその際問題となるのは、学校組織成員の誰がどのように児童・生徒への包括的な関与を担うのか、あるいは学校を支えていくどのようなサポート・連携がありうるのかという点であることが示された。 平成15年度は、こうした問題に焦点を当て、主としてアメリカでの事例の情報収集を行った。 その結果、「普通の子」に対しても、コミュニケーション能力の涵養や、感情のコントロールと言ったような情緒面での指導などがますます必要とされているということ、そうした状況の中で、学校と地域、諸機関をつなぐNPOなどの数多くの団体が作られ、それが学校と協力関係を作りながら活動しているという実態が明らかになった。多様化する教育的ニーズと、それに関わる人々の専門分化という状況の中で、そうした状況を「つなぐ」「関連づける」機能が必要とされ、それを担う団体・職業が独自の役割を果たしているのである。 こうした問題は、理論的には、機能システムの進展とケアの綜合性という観点から検討することが可能であろう。同時に、臨床的・政策的な観点からは、アメリカのようなNPOの存在と活動(SSW)が学校内職員の負担加重にならないような方策で、「日本型学校モデル」を展開する可能性を持つことが示唆された。
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