旧制中等学校の「進級試験」制度に関しては、実業学校では中学校と同等の試験規定があったものの、高等女学校令施行規則(1900年)では「各学年ノ課程ノ修了ヲ認ムルニハ平素ノ成績ヲ考査シテ之ヲ定ムヘシ」(第三三条)として、「平素ノ成績」.のみが進級要件とされていた。 そうした定期試験と進級制度は、旧制中等学校の教育課程の要の位置を占めるものであり、その具体的な態様の解明はきわめて重要な意義を持つ。さらには、戦前のこうした制度が、戦後の中等教育のあり方にどのような影響を与えているのかの究明も重要である。 本研究は、これまでの専門領域との関係で、主に斉藤が中学校、井澤が実業学校、そして両者が協力し高等女学校の資料収集を分担し、まずは府県教育史や県史資料室所蔵文書等を調査し、府県レベルの「中学校規則」等における定期試験と進級制度に関する規則を収集・分析してきた。さらに、定期試験や進級制度に関する具体的な態様を解明するために、各中等学校の「学則」「校規」「内規」レベルの規定を分析を行なってきた。加えて、いくつかの中等学校の「校内保存資料」として所蔵されている「教務関係資料」「進級判定会議資料」「成績関係資料」等に着目し、資料の収集を行なってきた。 それらの資料の整理と分類、抽出したデータの入力、さらには中学校、実業学校、高等女学校、それぞれの定期試験や進級規定の比較検討、加えて各府県の規定の異同とその背景等に関し、鋭意分析を進めている。
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