学校組織における情報技術(IT)の影響を明らかにするために、本年度は申請時の研究計画に基づいて、先行研究レビューの他、地方教育委員会におけるIT推進の実態にかかわる聞き取り調査、および質問紙調査を重点的に行なった。 地方教育委員会等の聞き取り調査では、(1)自治体の取り組み、(2)学校段階、(3)学校規模、(4)学校長のリーダーシップ、(5)学校内の推進リーダーの貢献によって、ITの整備および活用の推進には差が表れることを把握した。それらは同時に教職員個々のレベルでのIT活用の促進や阻害にも影響を及ぽすものであることも想定された。 なお、質問調査ではこのことを念頭において調査票の作成、対象校の選定を行なった。学校種を超えた全体傾向を包括的に捉えることを意図し、小・中・高で計1000校を対象とし、校長および情報教員担当者に回答を依頼した。調査期間は平成14年10月下旬から一か月間とし、学校の情報教育推進体制・組織の実情と理想像、ハードウェアの設置・整備状況・学校におけるIT活用の評価・ITに対する組織メンバーの態度などを問うた。調査票の回収率は、小学校224校(36.6%)・中学校82校(29.5%)・高等学校31校(28.2%)、計337校(33.7%)であった。なお、この調査結果に関しては、統計を取りまとめ「『学校における情報技術の影響に関する調査』調査結果の概要」として返送希望校に郵送した。 現段階では、ITは現時点では必ずしも教員の省力化に貢献していないこと、組織全体としてのIT活用には教科の専門性など種々の「壁」が立ち表れること諸文書の共有など情報の蓄積活用については肯定的な評価が得られている反面、児童・生徒の学習領域では、消極的な評価が見られること、など明らかになったと考えられる。 詳細な分析は継続中であり、平成15年度に予定している調査とあわせて、ITが学校組織に及ぼす影響とともに、IT活用の促進・阻害要因を明らかにしていく計画である。
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