平成15年度は前年度に実施した質問紙調査を分析し、調査報告書を取りまとめた。分析においては、学校のITの受け入れ、事実上の設備整備、運用実態から、学校におけるITの浸透度という概念を措定し、どの様な課題が生じているか、そして、ITの影響はどの様に評価されているかの分析を進めた。そして以下の点が明らかになった。 1.学校におけるITというイノベーションの採用と普及において、1)ハードウェア整備はIT活用促進の必要条件だが十分条件ではない、2)組織のIT活用には一定の学習が必要であるが、それは、単なる技術の習得を意味するものではない。しかも、3)そのような技術を習得のための動機づけになるための要因が必要である。ただし、この要因が何であるかはこの調査では明らかにできなかったが、一つの要点として職員室LANというシステムの重要性が示唆された。 2.教職員のIT利用の方向性について、1)教授学習活動へのIT利用は進捗していないわけではないが、それは特定の教科や従来からの「情報処理」の限られたというイメージに閉じ込められたものである。とくに、中学校、高校と教科の枠組みが強くなるにつれて、その傾向は強い。2)一方で、教師のためのツールとしてのITは確実に定着しつつある。文書の保存や加工などのITの得意な領域においては、その利用度や有用性評価は明らかに高かった。しかしながら、職員会議等の会議録、児童・生徒の個人情報の管理に関しては、利用度は高いとは言えない。高校では相対的に高いが、ハードウェア環境が整っているために、そのような利用がなされているのか、校種による職務運営の差異なのかは不明である。個人情報の保護対策も含めて、この領域での活用が今後どのように変化していくかについては注目する必要がある。 3.2.のように小・中・高という学校種によるITの利用の仕方と評価の傾向の違いを見いだすことができた。これは、たとえば、この違いは、情報教育の推進体制や校務分掌上の位置づけなどに表れてくる、学校種における組織原理の違いに起因するものだと考えられる。学校における情報化の推進-IT活用策をどのように開発しどこに位置づかせるか-を考える際に極めて重要な意味を持ち、学校の組織特性に応じた開発策の探究が学校経営研究においても重要であることを示唆する。
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