平成15年度は、植民地朝鮮における日本語教育の論理解明を目的として、まず、前年に引き続き、朝鮮人同化政策実施の初期段階である、第一次朝鮮教育令期(1911〜1922年)を対象に、以下の点について、重点的に研究を行った。朝鮮総督府は、国語教育により朝鮮人をどのように「同化」しようとしたのかについて解明した。その結果、総督府は、「同化」を段階的、漸進的に行おうとしたこと、国語による「同化」の概念は、「国民精神の涵養」「実用的な知識技能の習得」であり、その構成要素は、「天皇を尊ぶ」「国家に尽す」「実用」「勤勉」の4要素であることが解明された。そして、朝鮮総督府が意図した、第一次朝鮮教育令下での、「現在的・現実的同化」の意味は、朝鮮人に、「天皇への感謝」の気持ちを持たせ、「実用的」な知識を身につけ、実業に就いて、「勤勉」に働き、役人の命令に従順に従い、「国家に尽す」人間になることであった。この結果は、次頁掲載の論文、「第一次朝鮮教育令期の国語教科書における『同化』の概念」で発表した。 今後、次の段階として、この「同化」の概念が、どのように変化していくのか解明することが課題である。 次に、植民地期全体を通じての私立学校の日本語教育の実態について、前年に引き続き、『梨花七十年史』『京畿七十年史』『延世大学校史』などの学校史を読み解いて検討を行った。日本語教育の実態は、学校により異なり、事例研究を積み上げる必要があるため、まだ発表のための準備中である。
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