初年度の計画に従い、インドの初等教員養成の歴史的経緯に焦点をおいてその構造的特質を追求した。国内の研究機関(国立教育行政研究所など)では独立後のインド連邦政府の教育政策を含めた開発計画に関する資料などを収集し、研究目的のひとつである、県教育研究所(DIET)という形態での初等教員養成実現の妥当性あるいは蓋然性の検討に着手した。8月には申請した計画に沿って訪印し、国立教育行政計画研究所(デリー)作成の教員養成に関する資料を検討した。また、同研究所の研究者との討議を通じて、DIETの活動はインド連邦政府主導の全国的展開であるにもかかわらず、その実状には大きな地域差が存在することが明らかになり、新たにマハラシュトラ州地域初等教育担当部門(在ムンバイ)への訪問の機会を得た。これにより、同州教育研究所作成の資料の検討が可能となり、同州でのDIETの初等教員養成のみならず、同研究所を含めた最近の研究動向や住民参画を伴う初等教育の展開についての資料を得ることができたことは、今後の研究に資するところが大きい。 内外の関係者との面談や収集した資料を活用した結果として、英国統治時代からDIET設立に至る経緯とその背後にある歴史的課題を検討し、インドの初等教育と教員養成の改革には、独立前からの複雑な諸問題と独立後の困難の双方の克服が必要である点を論じた、「インドの初等教員養成:英国統治時代から独立後の初等教員養成の展開」(東海大学福岡短期大学紀要第4号、pp.1-27、2002年)をあげ得る。また、地方分権と住民参加という潮流のなかで教育活動に従事する初等教員についての講演として、「インドの先生達の生活と仕事-教職は最後の選択?」(福岡県宗像市観光講座、2002年6月19日)をあげ得る。
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