研究概要 |
本研究は中国において近年展開されてきた「国際水準の大学」形成にむけた政策がいかなる構造と機能をもったかを実証的に解明することを目的としたものである。具体的には以下の作業をおこなった.(1)1990年代以後の中国高等教育政策を総合的にレビューし、国際水準大学形成に関する政策を整理・分析した。文献研究、統計データの分析、教育部の関係部門と大学関係者へのインタビューによって実施した.(2)関連して、カリキュラム改革、人事制度改革、大学教育評価、高等教育のグローバル化、e-learningなど,テーマ別に調査研究を行い、その政策決定のプロセス、メカニズムを考察した。(3)北京大学、清華大学などの代表的な研究大学について訪問調査・インタビューを行い、国際水準大学形成政策がこれら大学の組織、財政、さらに教員の雇用・任期を含めた大学管理・運営の側面でどのような影響を与えたかを分析した。 これらの作業をつうじて本研究は、政府主導の資源傾斜配分を軸とする政策が中国の高等教育構造を急激に変化させこと、大学の教育研究の質的、量的向上を果たしたこと、ただしその成果はプラスだけではなく、学術バザート、教育研究の質の低下の危険などのマイナスの側面をもっていることを明らかにした。日本においても、COEプログラムが実施され、国際的な競争力のある教育研究拠点の形成は各国の高等教育政策のひとつの焦点となっている。中国はある意味ではもっともラディカルにこうした政策を推進した事例であり、本研究は中国の事例を紹介するだけでなく、こうした意味でこの分野での国際比較研究の進展に寄与することができたと考える。 研究成果は大学教育学会誌、IDE現代の高等教育雑誌、NIMEのNewsLetter等に発表し、科研報告書『中国における国際水準大学形成政策の構造と機能に関する研究』を纏めた。 今後の研究の展開としては「中国における大学の管理運営メカニズムの実証的研究-国公立大学の中国モデル」を課題に進めていく予定である。
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