研究概要 |
大学設置基準の大綱化以降、わが国の学士課程カリキュラムはどのような状況にあるのかを、履修単位数、教養教育の実施体制、カリキュラムの編成方針などから明らかにすることを研究課題とした。 平成14年度は、国内外の先行研究の検討、個別大学の過去10年間の学士課程カリキュラムをめぐる状況に関する資料収集を通じて、翌年度に向けての分析枠組みの構築をおこなった。 平成15年度は、4年制大学の学部を対象としたアンケートによる悉皆調査を実施した。配布数1,776票、回収数1,000票であり、回収率は56.3%となった。調査内容は、上記のように履修単位数、科目区分ごとの内容、教養教育の実施体制、カリキュラムの編成方針などである。これまでの研究が、機関を、それも国立を対象にしていたのに対し、本調査は国公私立の学部を対象にしているため、設置者や専門領域に違いを比較できるというメリットをもつ。 平成16年度は、このアンケート調査の分析を主に行った。得られた主な知見は、以下のとおりである。1.大綱化以降、全体として専門教育の比重が高くなっている。2.しかし、学部の専門領域による違いが大きく、理工系や医療系などは専門教育化をすすめ、文系は学際化という名目で多様化をすすめ、必ずしも専門教育化にはむかっていない。3.教養教育はスキル習得科目や大学への適応支援の科目が増加している。4.大綱化の引き金になった一般教育担当教員の問題はほぼ解消され、全学体制で教養教育が実施されるようになっているが、他方で、教員の負担感は増大し教養教育が機能しなくなったという問題も生じている。 カリキュラム編成の自由裁量を認めた大綱化は、教養教育の実施体制に関しては全学的な形態をとるようになっているが、カリキュラム編成は専門領域別の分化を推し進める結果となった。それは、学士課程全体として学生に付与する教育、専門領域を超えて学士学位としての共通性という問題を希薄化させる結果となっているようだ。
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