研究課題/領域番号 |
14510330
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
文化人類学(含民族学・民俗学)
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研究機関 | 旭川医科大学 |
研究代表者 |
松岡 悦子 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (10183948)
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研究分担者 |
加納 尚美 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 助教授 (40202858)
正高 信男 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (60192746)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2004
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キーワード | マタニティーブルーズ / 産後うつ病 / 出産 / 病院出産 / 助産所出産 / EPDS / 母子保健 / メンタルヘルス |
研究概要 |
マタニティーブルーズは、先進国の病院出産では5-80%の女性に見られるが、途上国の村落部においてはほとんど知られていない。このことから、マタニティーブルーズが先進国の病院出産に特有の症状ではないかとの仮説の元に、産後3-7日目と6-8週目の2回にわたり質問紙調査を行った。1回目の質問紙ではSteinのマタニティーブルーズの尺度を用い、2回目には産後うつ病のEPDSの尺度を用いた。 対象は、日本の病院で出産した女性216名、診療所で出産した女性46名、助産所で出産した女性246名、インドネシアの病院出産した女性56名とプスケスマス(保健センター)で出産した女性52名に対である。インドネシアでは、日本語から翻訳したインドネシア語版を用いた。 その結果、日本において、Steinの尺度で8点以上のマタニティーブルーズと見なされる割合は、病院で10.6%、診療所で4.3%、助産所で2.8%だった。また産後うつ病の尺度EPDSで9点以上だった割合は、病院で15.3%、診療所13%、助産所12.2%だった。また、マタニティーブルーズと有意に相関する項目は、会陰切開を受けた、産後の身体に痛みがある、初産、帝王切開による出産、産後1週間以内にミルクとの混合栄養をしているなどであった。産後うつ病と相関する項目は、産後の身体に痛みがある、子どもに関して心配することがある、子どもが泣くといらいらする、第1子、産後夫婦関係がまずくなったなどの項目であった。 インドネシアにおいては、Steinの点数が8点以上の割合は、病院出産した人が8.9%、プスケスマスで出産した人が3.8%と日本よりも低かった。産後うつ病に関しては、9点以上の割合が、病院で17.9%、プスケスマスで15.4%と日本より高い頻度で見られた。プスケスマスは、助産師のみで運営される所と医師が立ち会う所があり、医師の立ち会いの多いところでのSteinの数値は高くなっていた。 以上のことから、マタニティーブルーズや産後うつ病は、病院出産よりも助産所出産で有意に少ないことがわかった。その違いをもたらす大きな要因として、病院での医療介入の多さが産後の女性に身体の痛みや不快感を与えていることが示唆される。
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