本研究は、ユネスコの「世界自然遺産」に登録された地域に暮らす人びとと、その登録に伴い生じた観光開発の動きとの相互関係に関する文化人類学的調査研究を通じて、住民自身による「開発参加」のあり方や彼らの自然環境に対する見方を明らかにし、地域振興に関する実践的な提言を模索することを目的とするものである。 今年度は、国内研究対象地である鹿児島県屋久島、青森県と秋田県の県境にまたがる白神山地、および従来より研究の対象としてきた南太平洋のソロモン諸島における世界自然遺産地域の生活誌、自然保護活動および世界遺産登録にいたる過程にかかわる文献や基礎的資料、エコツーリズムやグリーンツーリズムなどの観光振興に関する文献の収集につとめた。 現地調査は、上記の国内外3地域において実施した。屋久島では、主に島内で活動するエコツーリズム主催会社や個人ガイドの組織化の動きや、島出身者とツーリズムとの相互関係の強化へ向けた動きに注目して調査をおこなった。白神山地では、青森県側で活動するNPO法人「白神山地を守る会」が主催するエコツアーに参加することを通して、ツーリズムと白神山地との関係のあり方を観察した。ソロモン諸島では、世界遺産登録地(レンネル島東部地域)と、諸般の社会状況から遺産登録の認可がおりなかったマロヴォ地域におけるエコツーリズムの現状とこれまでの経緯を、地元住民の日常生活に密着する中から明らかにすることにつとめた。マロヴォに関しては、共著書を刊行し、成果を公表した。
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