研究課題
本研究は、沖縄県、八重山地方の人々の世界観を認識人類学的視点から明らかにするとともに、生態と世界観との関係を解明することを目的とするものである。本年度では、京都大学大学院人間・環境学研究科大学院生高橋そよ氏を研究協力者として、波照間島および鳩間島において、自然認識について個別インタビュー調査を実施し、その動態に関する補足的資料の収集を行った。3年度にわたる実地調査で収集した資料の整理、検討を行い、世界観の伝承と表出の実態、現代における儀礼の意義、現代の八重山地方とアイヌにおける儀礼の果たす役割などの観点から分析を進め、最終的に、以下の点を明らかにした。(1)波照間島では、土地改良、圃場整備などによるサトウキビ栽培の効率化など生活環境の整備などが進められる中で、生態と世界観との関係は変容しつつあった。(2)生活の現代化のなかで、自然認識は変容し、たとえば、植物の方言名が失われつつあるという現状が明らかにされる一方、儀礼に関する植物の知識は保たれていた。(3)伝統的世界観の維持が積極的に図られ、現実には女性神役のなり手がいなくなるという問題を抱えながらも、年間で46回にもおよぶ神行事が現在でも実施されている。(4)たとえば、島中あげて実施されるプーリン(豊年祭)の行事では、一部では簡素化を図りながらも、神へのお拝みに関しては伝統を守るなど現代的調整が計られている。(5)神行事の実施は、信仰上の問題であるばかりではなく、島民としてのアイデンティティとも深く関わり、伝統文化の保持に大きな役割を果たしている。(6)波照間島においても、アイヌと同じように、土地あるいは空間が神の観念の結節点となりうるが、神々は「水の供え」を介して立ち顕れる点にアイヌの神の観念との大きな違いがある。以上の研究成果を報告書として出版した。
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Shamanbood : An Endangered Language, Oslo : Instituttet for sammenlignende kulturforskning (印刷中)
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