研究概要 |
今年度は、主として1990年代後半から「アジアン雑貨」「アジアの手仕事」として日本の市場に流通してきた東南アジア産の伝統染織、家具、インテリア雑貨などをめぐる言説を考察する上で、女性雑誌、インテリア雑誌を広く収集し、言説を中心に分析した。 一般にライフスタイル誌とカテゴリー化される中高年女性向けの月刊誌に始まり、若年女性向けのファッション誌にまで後半に拡大した産地・製作者紹介、ファッション記事、インテリアへの活用例などのグラビア記事に繰り返し登場するのは、「ぬくもり」「やさしさ」「心地よさ」といったキータームである。さらにインテリア雑誌に実例として紹介される個人の饒舌な語りは、「ライフスタイルを人生のプロジェクトとし、自分たちの個性とスタイルのセンスをモノの集合体の個別性の中に展示する」「消費文化の新しいヒーローたち」(M.Featherstone,"Lifestyle and consumer and culture",Theory, Culture & Society 4:55-70)を体現している。同時に、自らが消費するモノの背後にある「物語」への希求をあらわにしてもいる。 また、モノを媒介とした「アジア」と日本のつながりは、アジアの一部としての日本という意識を顕在化させる一方で、西洋のまなざしを内面化し、アジアを他者として扱う態度も生み出す。 このような言説の存在を背景に、上記の東南アジア産の染織品や家具を扱う小売店を約20箇所取材し、仕入れ先や客層などについて簡単なインタビューを行った。来年度はこのインタビューを継続するとともに、伝統染織等の主たる産地のひとつであるインドネシアにおいて、そのような製品の販売・消費形態を調査する予定である。
|