本研究は、多民族国家ミャンマー(旧ビルマ)における少数民族のエスニシティがどのように変動してきたかについて、現地資料を活用して分析を試みることを主目的としている。特に1990年代に入り、政府主導による周辺諸国との経済的活動が優先的に進行する状況の中で、諸民族のエスニシティが、どのように表象され、保存され、構築あるいは創出されていくかの過程について、現地の研究者の援助を得ながら、その動向の継続的な分析を遂行している。 本計画では、少数民族の中でも非ビルマ族として最大の人口を擁するシャン(TAI)族を中心に調査研究を展開している。 平成15年度は、過去、交流を重ねてきたシャン族研究に関する学術的ネットワークを活かして、文献資料の蒐集と現地でのフィールドワークを実施した。具体的には平成14年4月に中国雲南省徳宏で開催された「雲南四江流域TAI族文化比較国際学会」及びシャン文化保存運動関係資料を蒐集し、関係者と情報交換を行った。その結果、シャン族の自文化保存運動の輪郭を平成14年度に続いて追確認し、今後の見通しに関する一定の知見を得た。その一部は、平成15年12月のミャンマーでの国際会議で、Ethnic Identity and Knowledge of the Shanとして報告した。
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