この研究は、民族誌写真を基礎資料とし、そこから民族学的情報を得ようとするもので、対象となる時期は明治年間のアイヌである。 今年度は、1904年および1911年にアメリカの人類学者フレデリック・スターが北海道の平取、十勝で撮影した民族誌写真の集成、ディジタル化をおこなった。また、スターに関連して、1904年セントルイス万国博覧会に9人のアイヌの人々が参加したが、そこで撮影された写真の複写をアメリカ自然史博物館に依頼した。スターに関連するアイヌ民族の写真はほぼ集成できた。これについては、現在分析中である。 また、1918年札幌でおこなわれた『開道五十年記念北海道博覧会』を引き継いで、翌1919年に設置された『北海道拓殖館』に展示されていたとされるアイヌ民族資料が北海道開拓記念館に収蔵されており、このたび目録を作成したが、作業の過程で、本研究の一部として1912年大阪市天王寺公園でおこなわれた『明治記念拓殖博覧会』でのアイヌ民族展示写真を検討した。その結果、『拓殖館』資料の一部が、『明治記念博覧会』に出品されていたことが判明した。(北原次郎太「『旧拓殖館』資料の観察所見」出利葉浩司編『旧拓殖館コレクション一括資料目録』2003所収論文)明治、大正年間におけるアイヌ民族資料の博覧会での展示の実態が初めて明らかにされたことは評価されてよいだろう。
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