この研究は、アイヌ民族を被写体とした民族誌写真を基礎資料とし、そこから民族学的情報を得ようとするもので、対象となる時期は明治年間を中心とする。研究の手順は、写真に示されている民具類や人々の行動を当時の社会の文脈のなかで説明すること。つぎにその背後にある調査者(撮影者)の意図を明確化することにより、調査者および彼(彼女)が属する学会や社会のアイヌ民族観に接近しようとする。 平成17年度は、最終年度であり、研究のとりまとめが中心となるが、昨年おこなったアメリカ合衆国フィラデルフィア市にあるペンシルベニア大学附属博物館が所蔵するハイラム・ヒラー撮影写真の補足調査およびニューヨーク市にあるアメリカ自然史博物館が所蔵するバシフォード・ディーンの調査ノートの再調査をおこなう必要が生じたため、成果報告のとりまとめに先立ち、この調査をおこなった。 また、1904年アメリカ合衆国セントルイスで開催された万国博覧会に参加した9人のアイヌの人々を撮影した写真について、そのなかの一人である辺泥五郎氏の子孫にお話を聞くことができたので、その成果をふまえて研究ノートとして発表した。
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