本研究では、現在でも社会的弱者と位置づけられることの多い高齢者と女性について、日本律令制度という古代国家の枠組みのなかで、その法規定の特質と実態を明らかにすることを目的とする。14年度の研究実績の概要は以下のとおりである。 1.日本古代にみえる「老」と「女」について法制史料の規定を確認し、「老」という語の用例のパターンについて明らかにした。 2.律令国家の高齢者政策の具体的様相を文献および出土文字資料から検討した。 3.律令制下における女件のライフステージについて、地方豪族に出自をもち中央国家機構のなかで活躍した釆女(ウネメ)を中心に検討した。さらに彼女たちが出仕する背景となる王権と地方豪族の政治関係について、法規定の検討のほか生活の実態を分析し、国家論的レベルで考察を加えた。 4.1〜3は、文献史料の分析のほか、文字資料に関しては奈良文化財研究所のデータベースでの検索・国立歴史民俗博物館で実見する方法によって行った。 《総括》国家政策論・社会構造論にまで視野を拡大した形で日本古代の「老」と「女」についての考察が可能になり、社会意識としての「老」と「女」を明らかにする手がかりが得られた。
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