1 筒井氏に関して。中世後期の大和国おいて、もっとも注目すべき武士は筒井氏である。同氏は越智氏とならんで戦国期大和の雄であり、戦国大名にもっとも近い存在である。しがしながら、同氏に関する研究は進んでおらず、歴代の当主についてさえ信頼すべき学説はなかった。本研究においては、ひろく史料を調査することにより、南北朝期以降の歴代当主を確定することができた。研究の中軸となる筒井氏研究の進展によって、大和国の武士・武士団を考察するための基礎を固めることができた。 2 未刊史料の調査・収集。京都市山田家および横浜市中村家所蔵の福智院家文書を調査・収集し、多くの新史料に接した。とくに山田家所蔵分の冊子形態史料の紙背に多くの紙背文書を見出し、写真撮影した。これらの解読・分析を通じて多くの新知見が得られると思われる。 末柄は公文書館所蔵「寺門事条々聞書」「長専五師記写」の翻刻・校訂を行い、研究成果報告書に掲載した。この翻刻史料の公開は、室町初期の武士・武士団の研究を進展させるものである。 3 データベース。大和の武士は、じつは僧体となっている者が多い。したがって、武士と僧とをその外形で厳密に区分すると、武士のデータベースとしては意味のないものになりかねない。その実態や出身を検討して、取るべきデータと捨てるべきデータを区分していく必要がある。そういった困難のため、作業は難航したが、中心となるデータは収集、蓄積することができた。
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