今年度は昨年度に引きつづき、次の調査・研究を実施した。(ア)本研究では19世紀から20世紀日本全国において広範に建立された記念碑の多様性と、その建立と背景、その歴史的意義を解明することを目的としているが、建立されたさまざまな種類の記念碑の実態調査を愛知県をフィールドとしておこなった。戦前以来の市町村史・記念碑調査書などを網羅的に調べ、愛知県内記念碑データベースの作成をおこなった。(イ)愛知県内の記念碑データベースでは、現在のところ4000基に及ぶ記念碑の情報を集積しており、建立年代・建立者・建立目的・撰文者などについて、データを整理しつつ、19-20世紀の記念碑文化の推移・特質など、全般的な知識を獲得するために、分析的作業を実施した。(ウ)本研究では、日本の記念碑文化を他の社会・民族の記念碑・石造物と比較研究することを目的としている。今年度は中国(北京市・天津市・唐山市)において石碑・石造物の調査を実施した。とくに唐山市においては、1976年の唐山大地震に関して地震記念碑・慰霊碑などの調査をおこない、現在民間団体の手で市内の公園に慰霊碑が建立されつつあり、社会主義体制下での死者追悼の様式・理念に関して貴重な情報を得ることができた。また北京・天津両市においては、種々の歴史的施設・史蹟における記念碑などの調査を実施し、あわせて史蹟保存の現状に関して多くの資料を得ることができた。(エ)記念碑文化の比較史的研究のために、西洋史・東洋史及び中国人研究者とともに、研究会を行い、その成果を『記録と記憶の比較文化史』と題して刊行した。
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