本年度は課題研究の第2年度目にあたり、前年度からの基礎資料収集作業を継続するとともに、その整理をおこなった。基礎資料収集のうち、出土文字資料については、前年度に過去の情報の確認・集成が終わっていたので、今年度は補充的な確認にとどまった。9世紀の基本史料にあたる『続日本後紀』に関しては、昨年度にひきつづき諸本・校本の調査・収集を、國學院大學付属図書館・京都大学付属図書館・国立公文書館などで実施した。國學院大學付属図書館では、高柳本『続日本後紀』のみならず稲葉本『続日本後紀』についても写真撮影などの複写が認められず、高柳本に関してはあらかじめ準備した活字テキストをもとに現物で校合をおこなった。また名古屋市立鶴舞図書館や早稲田大学付属中央図書館において江戸時代の注釈本についても調査を実施し本文の受容・伝来の過程を考究する史料を収集した。さらに国会図書館所蔵『続日本後紀』について、その旧蔵先を確認するために比叡山文庫において調査を実施し、当該本が叡山文庫に包括された真如堂文庫から流出したものであることが確認できた。なお、これらの史料調査に並行して明治大学付属図書館・早稲田大学付属図書館などで関係論文の収集なども実施した。 その一方で、平安時代中期・後期の古記録など各種史料に引用された承和期の事績に関しては、大学院生の協力をえながら、『兵範記』『江記』『平知信朝臣記』・『為房卿記』などについて調査し、『東南院文書』などにみえる事績などとともに編年目録を作成した。その本文については、学生アルバイトに依頼して、史料本文をコピーしてカード形式とし、次年度以降の編年史料作製の準備とした。
|