今年度は、昨年度に引き続き、(1)一条氏関連城郭跡の調査、(2)幡多郡域を中心とした高知県内出土の中世遺物の集成、(3)一条氏関連の中世文書・記録の収集、を進めるとともに、(4)隣接地域の遺跡の見学および研究会、(5)2年間の調査成果の市民向け報告会を行った。 (1)は芳奈城跡・上長谷城跡など3城跡を調査したもので、昨年度の成果と合わせて、一条氏時代における幡多郡の中世城郭の変遷や特徴をある程度見通すことができるようになった。今年、最も力点を置いたのが(2)であり、これまで幡多郡を中心に高知県域から出土した貿易陶磁器・土器や石造遺物をトレースして図面化し、集成化をはかった。これによって貿易陶磁器・土器などの出土遺物から、中世土佐の地域的特質を鳥瞰し、客観的に評価することが可能になってきたし、それらの遺物がどのような経路をたどって運ばれてきたかも予想できるようになってきた。(3)は刊行された史料集から土佐一条氏関連の史料を収集する作業で、現存または近世まで高知県域に伝存していた文書・記録・金石史料主要なものについては、かなりの部部を集めることができた。(1)(2)(3)の調査・集成・収集が進展する中で、遺跡・遺物と文献との総合的な考察ができる条件が整いつつある。 (4)は幡多郡域と隣接地域との遺跡・遺物の比較・検討を進めるために行ったもので、伊予国宇和郡(愛媛県宇和島市・松野町・広見町)の城跡・寺院跡、出土遺物を見学し、現地の研究者との意見交換を通じて少なからぬ知見を得ることができた。(5)は予算の枠外で実施した試みであるが、高知県西部・愛媛県南部から100人近い市民が集まり、西南四国の歴史の重要性を喚起することができた。今後の調査協力や情報提供をお願いするよい機会であった。
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