今年度は、昨年度に引き続き、(1)一条氏関連の文書・記録等の収集と(2)城郭跡の調査を実施するとともに、3年間の成果をまとめるべく、(3)史料・資料の検討・考察を行った。(1)は写真版からの翻刻を中心に作業をすすめ、これまでに収集した史料と合わせて、中世土佐一条氏の具体像を提示できるよう務めた。(2)は一条氏関係の城郭跡の中で重要な位置を占める加久見城跡の補足調査が中心となったが、昨年度の調査を踏まえつつ、本丸や居館の位置を特定する作業を行った。(3)は成果報告書の編集を意識しつつ、市村が文書・記録等の考証を行い、松田が城郭跡や遺物についての分布や集計を基にした考察を行った。 その結果、土佐一条氏が戦国期を通じて京都の天皇・公家等と特別な関係を維持していたこと、その一方で、16世紀には在地支配に成果を上げ、長宗我部氏と覇を争うほどの地域権力へに変身していたこと、などが明らかになった。こうした土佐一条氏の動きは、幡多郡を中心とした中世城郭跡の検討結果とも一致し、長宗我部氏以前に土佐西半を支配した一条氏の築城技術の存在や、経済・文化等さまざまな面で地域社会に与えた影響の大きさを改めて確認することができた。 こうした考察を前提に報告書の作成を進めた。しかし、幡多郡出土の貿易陶磁器等のトレース図については、ごく一部を除いて分量の関係で収録できなくなった。また、文書・記録の中にも、やはり分量等の関係で収録できなかったものがある。本研究を踏まえた次の研究企画において、何らかの形で公にしたい。
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