研究2年目の本年度は、初年度に収集した植民地公娼制度に関する基礎資料(植民地期台湾で発行されていた新聞『台湾日日新聞』のマイクロフィルムなど)の分析とともに、昨年度収集しきれなかった公刊資料(『台湾民報』など植民地期台湾で発行されていた雑誌、『関東庁警務局資料』マイクロフィルムなど)や未公刊資料(国史舘台湾文献館〔旧・台湾省文献委員会〕所蔵の旧台湾総督府関係档案など)の調査を進めた。また並行して、日本の植民地統治を経験した台湾の方々へのインタビュー調査も実施した。一方、植民地公娼制度のモデルが日本「内地」の制度であったことに留意し、とくにその中心的な位置にある東京都・警視庁の関連資料を国立国会図書館、東京都公文書館などで調査し、内容の分析を進めた。研究成果の発表は、今年度後半から台湾に滞在することになったため、それほど多くは行うことができなかったが、2003年9月に中国・黒竜江省で開かれた「東北抗日歴史問題第3次国際学術討論会」(黒竜江省社会科学院主催)に出席し、中国東北地方の日本支配地域(関東州、満鉄沿線地域)で実施された公娼制度の内容と朝鮮人女性の生活状況を検討したうえで、「満洲国」の公娼制度、慰安婦制度との関連について研究報告を行った。その他、2003年5月に韓国・ソウル市で開催されたシンポジウム「日帝下ファシズム支配政策と民衆の生活相」(延世大学校国学研究院主催)と、12月に台湾・台北市で開催された「第2届東亜細亜近代史青年研究者交流会議」(於台湾大学)ではコメンテーターをつとめた。
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