平成14年度研究実績 1、記録・古文書のサンプル調査として鎌倉遺文から、中世債務契約文書を抽出する作業をおこなった。一年間の作業で、6巻までの作業途中であるが、売券・請取状・質券・去状・借状・曳文・流状・請文・書状などきわめて多様な文書様式をもっていることがあきらかになった。このことは中世貸借契約が特定な文書様式に固定されていなかったことを物語るとともに、フレキシブルなものであったことを示すものであろう。逆に多様な文書様式の文書をすべて貸借契約の視点から詳細に再検討しなければならないことがよりはっきりとした。次年度にむけて、作業計画を見直すことが必要になった。 2、東大寺図書館所蔵の未成巻文書の原本調査や寺院関係史料調査によって、平安期の中世請取状が成立する以前の返抄は、三つの類型があることがわかった「納」を書出すもの・「検納」を書出すもの・「進上」と書出すものが加筆によって請取状に変化したものの三つである。したがって、その後、「請取」と書出す文書様式は保元三年を初見史料として登場することがはっきりした。これによって、中世借用状の成立過程についての骨子を固めることができた。
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