14年度は、年度計画のそれぞれの担当分につき、次のような調査を行った。 松本は、主として基隆市・廣遠壇の紅頭道士の儀礼について調査を進め、同時に台湾北部の道士の儀礼に関する文献を収集した。前者については、台北市松山区の昭明廟で毎日行っている呪術儀礼、特に前世からの因縁や抱いている不満などが原因でたたりを起こし、病気や災害などの原因となっている死者を救済するための超抜などについて、あるいは旧暦の7月基隆の各地の廟で行われる普渡(施餓鬼)について調査を行った。後者については、中央研究院民族学研究所図書館所蔵の文献や、道士の用いるテキストを、コピーするなどして収集した。 丸山は、台湾南部における道士の資格取得の問題、具体的には奏職と受〓の問題について、現在70歳代の道士と50歳から60歳代の道士、および30歳から40歳代の各世代ごとの状況について、台南地区と高雄地区において調査を行い、世代ごとの差異および地域ごとの差異を明らかにするために、資料の収集と聞き取り調査とを進め、大きな成果を収めた。現在では次年度に本格的に行う予定の分析について準備を進めている。 浅野は、台南市において台南市の道教会を訪問し、理事長の陳榮盛氏ほか数名から、台南市における道教の変遷、台南市の道教会の活動状況等について聞き取り調査を行い、安平開台天后宮においては、道教および民間の祠廟祭祀について、また高雄県の永安郷においては、安葬儀礼、功徳儀礼を調査し、道士の現在の職能についての資料を収集するなど、台湾南部の道士の活動状況と、宗教儀礼の現状についての調査を進め資料を収集した。
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