15年度は、年度計画のそれぞれの担当分につき、次のような調査を行った。 松本は、昨年度に引き続き基隆市・廣遠壇の紅頭道士の儀礼について調査を進め、同時に道士の儀礼に関する文献を収集した。前者については、旧暦7月の普渡の儀礼について台北市・汐止鎮の祠廟や病院で行われたものについて、実地調査を行った。またたたりを起こしている死者を救済するための超抜という呪術儀礼について、昨年の調査における疑問点を質すために聞き書き調査を行った。南部の紅頭法師については、婦人の体の具合が悪いときに行う梗花という呪術儀礼について、聞き書き調査を行った。 丸山は、高雄県永安郷の道士の聞き書き調査を進め、父祖4代にわたる活動の変遷、および師資相承の具体的な歴史、および台南市とその近郊の道士の特徴や相互の関係について知見を得ることができた。さらに道士や法師の用いる儀礼文書について、複数の地域の伝統を示す資料を入手し、それにより台湾南部の道教と民間信仰のミクロ的な地域的差異について、解明するための手がかりを得た。また昨年度に収集した高雄県岡山鎮以南の祈安文検についても、その解読を進めた。 浅野は、やはり昨年度に引き続き台南市の陳榮盛道士のライフヒストリーや、行う儀礼に関する聞き取り調査を進めるほか、「霊宝恭祝聖寿しょう」などの儀礼、および台南県の祠廟の現地調査を行い、あわせて道教儀礼や民間信仰についての関連資料を収集した。さらに台湾の研究者から、現在のこの方面の研究動向についての情報・資料を収集し、調査研究の進め方などについて意見を交換した。
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