2003年度の本課題に関わる成果の主要なものは、以下の通りである。全体の研究計画の中心をなす論文の一つ「清代における『賤』の観念」を完成させ、03年12月に刊行した。8月には、台湾の明清史研究会及び中央研究院歴史語言研究所において、それぞれ「清代中期の冒捐冒考問題」及び「明末清初の身分秩序」の報告(中国語)を行った。また、04年3月に大阪市立大学の国際シンポジウム「東アジア近世都市における社会的結合」において「明末の都市雑業層と身分問題」と題する報告を行った。以上はいずれも本課題の直接の研究成果である。そのほか、03年11月には韓国ソウル市で開かれた「韓国明清史学会20周年記念大会」に参加し、「ポスト16世紀問題と清朝」と題する報告を行った(中国語)。これは、清代における身分問題を、東アジア全体の視野から検討したものである。 2003年度は、SARS及び校務のため、本科学研究費の出張旅費を用いて史料収集及び研究交流を行うことは断念せざるを得なかった。上記の台湾や韓国での報告は、いずれも先方負担の旅費で行ったものである。主な活動としてはまず、昨年度に引き続き、マイクロフィルムの形で清代の条例を収集し、謝金を用いて整理を行ったことが挙げられる。そのほか、中国史全般の身分秩序に関わる文献・史料を収集した。出張旅費に使用しなかった分は、主に文献収集・史料撮影・及び謝金の増額分に充てた。
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