研究概要 |
まず,本年の研究活動としては,8月1日から12日まで,ハカス共和国のミヌシンスク博物館を訪れ,現地研究員のレオンチェフ氏等の協力を得て,イェニセイ河上中流域で発見され本館に収蔵された古代テユルク・ルーン文字で書かれた古代トルコ語碑文の中から,エレゲスト碑文(E10),ベグレ碑文(E-11),エリ・バジ碑文(E68),ヘムチック・チュルガック碑文(E41)の計4点の調査を行なったことが挙げられる。今回は博物館の事情もあり,調査期間が短かったので,イェニセイ碑文の中でも大きな碑文もしくは複雑な構成をもつ碑文にしぼって,測量し,写真及び部分的な採拓作業の上で解読研究を行った。その際には従来の判読研究との比較作業を行い,これまで見落とされていた文字を指摘したり,欠損個所の何点かを復元することができた。しかし一部の碑文字句については判読が困難なものもあり,今後とも調査を継続すべき必要があることを痛感した。 また本調査時には,偶然ながらロシアを代表する古代イェニセイ碑文の専門家I.L.クィズラソフ(モスクワ考古学研究所上級研究員)が本館を訪れたことを機に,同氏から本館所蔵の碑文の原発見地や古代テュルク・ルーン文字碑文に関する日露両国での研究現状について情報交換を行うことができたことは誠に貴重な収穫であり,大きな刺激となった。またこの調査時には本博物館の附属図書館からはイェニセイ碑文及び当地方の考古文物に関する貴重な当時の報告書や論著について複写の許可を得たうえで,複写蒐集することができた。 この他,本年は昨年から始めた碑文のデータ整理及び解読作業を継続しており,昨年来の現地調査の成果を踏まえて,碑文で頻出する字句についての用法について考察を行ったことも付言しておきたい
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