研究概要 |
本年度の研究では,これまでの2年間にトゥバ共和国およびハカス共和国の現地博物館で調査したイェニセイ川流域の草原で発見・蒐集された幾つかの古代テュルク・ルーン文字銘文の現地調査で得られた結果について,特に先行研究を代表するロシアのワシリエフ,コルムシンおよびクィズラソフが発表している解読成果と比較検討を行った。又,可能な限り,関連する銘文字句については,同時代の漢文史料やモンゴリアで発見されたルーン文字資料とつき合わせつつ,文献学的・歴史学的観点からも再検討を行った。中でも,イェニセイ川中流域に発見され,私自身もかつて考察を行ったことがある,古代テュルク時代の石人の背中に刻まれたルーン文字銘文(トゥバ第3碑文-E37)は,その字句内に<カラ・カン(黒汗国)>,<テュルギッシュ族(突旗施)>,<チャンシュ(<chin.長史)>などの貴重な歴史字句を含むことが今回,確認されたことは当該地域の歴史背景を探る上でも極めて貴重であると考える。私はこの碑文を初めとする現地調査を踏まえつつ,その成果の一端を2004年10月4〜6日にキルギス共和国のマナス大学で開催された<第2回トルコ文明に関する国際会議>において成果報告を行った。又この学会には,ロシアやトルコ,中アジア諸国のトルコ文献学・歴史学・考古学の諸分野で第一線の研究者とも,碑文の調査研究情報や今後の碑文・遺跡に関する保事業について,様々な観点から有意義な討論を行うことができた。その際に,キルギズ共和国に残るタラス碑文などの古代チュルク文字諸銘文や同時代のアクベシム遺跡やクラスナヤ・レチカ遺跡やそこからの出土品についても実見する機会をもてたことは大きな収穫となった。又,合わせて本会議に参加することで,本課題研究を推進していくためにも学術間における国際協力ネットワークの構築が必要であること,調査成果に関する情報交換や学術交流がさらに促進すべきとの認識を再確認させるものとなったことを強調させていただきたい。
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