本研究の中間年となる今年度は、「宋代史関係図書」を新規購入し、それらを利用しつつ、昨年度までに蒐集済みの史料の解析を集中的に行った。また広島大学大学院文学研究科東洋史研究室をはじめとした諸機関にて関連史料の調査・蒐集を行い、史料読解のための研究会にも参加して内容の検討をした。 また本年度は、昨年度までの成果に新たな成果を加えつつ、全体をまとめる作業に取りかかった。第一に、北宋末期以降の地域の宗教社会の実態を総合化し、唐中期から南宋期の間で当該期の特徴を位置づけた。また、さらに北宋末期以降の祠廟を核とした地域杜会の特徴を、明清時代までをも見通した中で位置づける作業も行った。これらの成果は、8月に高知大学を主催校として開催されたシンポジウム「中国宋明時代の宗族」、同月に大韓民国・慶煕大學校にて開催の韓國中國史學曾第4回國際學術大曾「中國史上的宗族與杜曾」(檀國大学校金榮濟先生代読)、12月に大阪市立大学大学院文学研究科にて行われた21世紀COEプログラム「都市文化創造のための人文科学的研究」Aチーム(比較都市文化史)第15回研究会にて口頭及び論文にて公表された。第二に、上記成果をさらに宋王朝の祠廟制との関連の中で総合化し、とりわけ社会の転換期と位置づける徽宗時代の社会構造を再評価する作業も行った。その成果は、11月の東方学会・第53回全国会員総会・シンポジウム「「唐宋変革」論を考える」にて、口頭、及び論文で発表するとともに、学術誌『人間科学研究』にも論文で公表した。 さらに、本研究期間の最終年度となる来年度に、本研究の成果を国際会議(平成16年8月にモスクワで開催予定の第37回国際アジア・北アフリカ研究会議)で発表すべく、同じパネルを組むメンバーとの研究打合せ会議を大阪市立大学等で度々開き、発表内容の検討を行った。
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