研究課題
基盤研究(C)
300年以上にも及ぶ宋代はいかなる時代であったのか。このテーマは、宋代史研究に携わる我々の多くが共有している最重要課題である。そして、その課題を克服していくためには、従来の視点からではなく、領土的にも、政権規模にしても明らかに異なる北宋と南宋という両時代を時系列的に捉え、かつ前後の時代をも視野に入れ、所謂「唐宋変革」論に再考を促すというような研究視点が不可欠である。代表者須江は、この研究で、中国独自の精神文化を象徴する祠廟という素材に着目し、それに関する様々な記録や言説、宋代に特異な賜額・賜号という現象について検討を加え、唐から南宋末期における王朝権力と地域社会との連関構造の変質過程を明らかにしようとした。特に、徽宗のある時期から南宋期に多く作られた祠廟の記録に緻密な分析を加え、そこに見出せる言説生成過程や地域社会構造を抽出し、当該期の人々のアイデンティティを明らかにすることを目的とした。その結果、祠廟制の推移を通して、唐中期から南宋期にかけての社会構造の変質過程を三期(唐中期頃から慶暦・煕寧年間まで→慶暦・煕寧年間から政和・宣和年間まで→政和・宣和年間から南宋末期まで)に分けて捉えることができた。中でも宋代社会の変質期に当たる北宋末期、とりわけ宣和年間を前後とする徽宗朝期は、民間で祠廟の建設ラッシュがおこり、三つの教の改革を宋朝が積極的に模索した時期に当たる。そして神々の力を借りた統治の枠組みが形成され、王朝権力と「地域社会」をめぐる社会的構造が徐々に変化していったということが明らかとなった。代表者須江は、少なくとも、上記で示した三区分によって、宋代における社会構造の変質過程を捉えた。このように宋という時代を把握できる以上、「貴族制」から「君主独裁制」への移行を最大の特色とする「唐宋変革」論は、再考されなければならないであろう。
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The Research Reports about Tang-Song Transition, for the Toho Gakkai's 53th Annual General Meeting
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