研究概要 |
研究課題「中世ドイツ帝国における歴史意識と帝権理念史の基礎的研究」については,平成16年度は,11世紀初期のザリエル朝成立から,シュタウフェン朝時代の13世紀初期に至る,約200年間のドイツ帝権史・帝国理念史を中心として,諸種の年代記,編年誌,歴史書等の読解から,中世盛期におけるsacrum imperium(「神聖帝国」)ないしregnum Romanorum(「ドイツ帝国」)の意識,また,当時の人々のこれらの認識及び,その歴史観を史料に即して解明し,あわせてキーワードに即してimperium Romanum(「ローマ帝国」もしくは「普遍帝国」)理念に依拠した「ドイツ帝国」,rex Romanorum(「ドイツ皇帝」)の理念史全体の歴史的推移を検証することができた(400字×400枚相当分)。 上記の研究進展に併行して,平成16年度の研究成果として発表されるものは,『法制史研究』54号(平成17年4月刊行予定)所収の論文書評(印刷中)及び『西洋史研究入門[増補改訂版]』(名古屋大学出版会,平成17年4月刊行予定)の第13章改訂(印刷中)がある。研究論文としては,歴史学研究会編『シリーズ歴史学の現在 幻影のローマ』(平成17年9月刊行予定)に所収される論文「ドイツ王のローマ」を完成させている。 中世盛期・後期の歴史意識・帝権理念史の研究と並行して,中世末/近世初期に関して新たな研究視覚も得られ,研究課題を究明する作業が深化・拡大しつつある。それらは15世紀後半のブルグント公国史に関連するところの,フランス側から見た神聖ローマ帝国観であり,また,宗教改革者マルティン・ルターにおける「ドイツ国民」観の研究である。ともに平成17年度にまとめられる『研究報告書』の重要な構成部分となる。
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