研究概要 |
研究課題「中世ドイツ帝国における歴史意識と帝権理念史の基礎的研究」については,平成17年度は,11世紀初期のザリエル朝成立から,シュタウフェン朝時代の13世紀初期に至る,約200年間のドイツ帝権史・帝国理念史に加えて,14・15世紀におけるドイツ帝権とドイツ主権,帝国とドイツの理念と現実の関係を究明する研究を進めた。 中世後期・末期における「神聖帝国」ないし「ドイツ帝国」の意識,当時の人々のこれへの認識及び,それらの歴史観を史料に即して解明し,あわせて「ローマ帝国」もしくは「普遍帝国」の理念に依拠した「ドイツ帝国」の理念史全体の歴史的推移を検証することが出来た。 上記の研究進展の成果を取り入れて,平成17年度中に研究成果として発表されたものは,「15世紀のドイツ王=皇帝の教会支配権」(『西洋史研究』新輯34号,平成17年11月,pp.25-43.)及び「ドイツ王のローマ」(歴史学研究会編『幻影のローマ』所収,青木書店,平成18年3月刊行,.pp.263-301.)の両論考である. 平成14年度から平成17年度の4年間にわたる研究をまとめる研究成果報告書に関して,今後への新たな研究視角も得られ,研究課題を究明する作業が深化・拡大しつつある。その一つが研究成果報告書に盛られる15世紀後半のブルグント公国史に関連するところの,フランス側から見た神聖ローマ帝国観である。また,宗教改革者マルティン・ルターにおける「ドイツ国民」観の研究については,研究の端緒を得ている。
|