関係諸史料と二次文献の収集と整理を前年度から継続して行い、これを完了した。 以下の関係文書の組織的調査を行い、アッシリアの行政州の建設と運営・維持に関する一連のデータを網羅的に収集・整理し、データベースを作成した。(1)1994年に公刊されたA.R.Millardのエポニム表とエポニム年代誌の新史料集成。(2)同じく1994年に公刊されたH.Tadmorのティグラト・ピレセル3世の王碑文(約30点)の集成。 本研究課題に詳しい、ケンブリッジ大学のJ.N.Postgate教授と山田(研究代表者)が会談し、研究方針などについて意見交換を行った(ロンドン、平成15年7月10日)。 個別研究として、アナトリア地域におけるアッシリアの領土支配を扱う論考をまとめた。この研究成果の一部は、国際古代オリエント・コロキアム「古代アナトリアにおける文化の継続と断裂」(中近東文化センター、平成16年3月14日)において発表される。 作業の進行とともに、明らかになった研究上の問題に鑑み、研究計画の見直しを行い、以下を来年以降の目標として定めた。(1)アッシリアの行政州システムの発展と変容についての研究は、データが豊富なサルゴン2世の治世を一応の下限とし、それ以降の帝国期後半に関しては、概括的な考察に止める。(2)著しくアッシリアの行政州建設が進行したティグラト・ピレセル3世の時代は、我々の研究計画にとって特別な重要性をもつ一方、王碑文の保存状態が良好でないため、さらなる文献学的検討が必要である。そこで来年度は、同王の碑文の新しい編集本(H.Tadmorと共著でTorontoから出版予定)を仕上げつつ、同時代の書簡史料を研究することとする。(3)また、来年度は、個別研究として、アッシリアの辺境での交易基地(karu./bit karu)に関する論文を完成させる。
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