本研究は、アメリカ合衆国における連邦軍(国軍)とマイノリティ(少数派民族集団)の関係を、アメリカ国内のマイノリティ間および他国の国軍との比較史的視点から事例研究および理論的考察を行うことにより、20世紀後半における脱植民地化、シティズンシップ、ナショナリズム、「戦争の記憶」の諸問題に対する歴史研究上の貢献をめざそうとするものである。 平成16年度は研究の最終年度であり、研究成果の公開に力を入れた。まず6月にオランダ(ライデン)で開催された第7回国際フィリピン学会において、フィリピン系第2次世界大戦ベテラン支援運動とフィリピン系アメリカ人コミュニティの動向に関する研究報告を行った。この主題は米比両国でも未開拓の分野であり、参加者および報告ペーパーの閲覧者から多くの好意的反応や、引用の申し込みを得ることができた。 3年間にわたる研究期間を通じて展開したイラク戦争によって、アメリカ連邦軍におけるマイノリティの処遇は、いわゆるグリーンカード(永住権)海兵隊員の問題を焦点として大きな注日を集めるようになった。本研究がコア事例として調査したフィリピン系第2次世界大戦ベテラン支援運動も、イラク戦争におけるフィリピン系連邦軍兵士の貢献の強調や戦没者の慰霊を運動の中に取り入れるようになっている。このため本研究でも、その動向を補充調査するとともに、これまでに収集した資料を再検討した。以上の研究成果をウェッブ上に公開する準備を進めるとともに、研究成果報告書を作成した。
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