まず人権概念の展開や米国の人権外交の検討に必要な、人権外交、外交思想並びに国際連盟に関する基本資料の通読を開始すると共に、内外の専門家からレビューを受けた。その結果、ナチスドイツなどの活動はもちろんのこと、その他にも、両大戦間期における非政府組織並びに国際機関の活動が、人権概念の変化に重要な役割を果たしたことがわかつてきた。 当初海外での面会を予定していた海外の研究者がたまたま別件で来日した機会をとらえて面会する事が出来たため、今年度は海外出張をとりやめ、その予算を飯倉の外交史料館等国内における資料収集に振り向けることができた。その過程で、これまであまり重視されることの無かった国際連盟の知的協力委員会が、一九三〇年代という世界が孤立化を深める時期において活発な活動を続けており、また日本の連盟脱退以後も、日本が大戦開始直前まで代表を送っていたことが明らかとなってきた。また、他にも非政府組織、中でも人種平等や植民地の独立を唱える様々な組織の活動が、すぐには実を結ばなかったとはいえ、その後の人権概念の変容に少なからぬ影響を与えていたことが、国際連盟の資料などを吟味することによってわかってきた。 今年度の研究活動によって、今後重点的に検討すべきなのは、それらの非政府団体と、国際連盟とのつながりの部分であるということが明らかとなった。
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