研究課題
基盤研究(C)
西洋の概念が所与のものとして押しつけられ、押しつけられている側が無自覚でいる代表的事象の一つとして、人権概念を取り上げ、あたかも所与のものとして扱われている人権概念自体が西洋起源であり、その西洋起源の人権概念が普遍性を帯びていく過程を歴史的に明らかにしたのが本プロジェクトである。本課題では、数多い人権概念の中でも、特に人種平等概念の変遷に焦点をあてて分析した。その結果、これまで人権概念の変遷にとって最も重要な時期として注目されてきた第二次世界大戦末期から世界人権宣言採択にかけての一九四〇年代半ばから後半にかけての時期よりむしろ、両大戦間期において極めて重要な変化が見られたことが明らかとなった。特にアメリカ合衆国国内社会における様々な変化が重要であることが明らかとなった。例えば一九二〇年代にアメリカ合衆国で見られた人種主義の盛り上がりが、かえって人種平等概念の進展に大きな影響を与えて点は重要である。また、特にヨーロッパの側において、これまで重視されてこなかった非政府組織が重要な役割を果たしていたことも明らかとなった。特に、ロンドンやブリュッセルの民間団体の活動が大きな役割を果たしていることがわかってきた。本課題でその一端が示された、押しつける側も押しつけられた側も無自覚で、現在所与のものとして扱われている西洋中心の構築物の歴史的生成過程についての知見は、国際文化交流の実務においても重要な貢献をなすものであり、今後は、人種平等以外の人権概念についても同様の研究がなされるべきであろう。
すべて 2005 2003 2002
すべて 雑誌論文 (6件)
太平洋世界の文化とアメリカ-多文化主義・土着・ジェンダー(瀧田佳子(編))(彩流社)
ページ: 57-76
Pacific Cultures and the United States (Yosiko Takita ed.)(Sairyusha)
浸透するアメリカ・拒まれるアメリカ(油井大三郎・遠藤泰生(編))
ページ: 72-88
Comparative Studies of Americanization (Daizaburo Yui et Yasuo Endo eds.)(Tokyodaigaku shuppankai)
二〇世紀日米関係と東アジア(川田稔・伊藤之雄(編))
ページ: 119-169
US-Japan Relations and East Asia in the Twentieth Century (Minoru Kawada et Yukio Ito eds.)(Fubaisha)