本年度はこの研究の最初の年であるため、対象となるローマ帝国西方属州に関する最新の研究情報を収集することにまず努力した。わが国では公的機関にはまったく所蔵されていない考古学関係の雑誌なども積極的に購入したり、調査の際に閲覧した。また、予定通り夏季にイギリスに調査旅行をおこなった。拠点はケンブリッジ大学の1コレッジであるクレア・ホールに置き、ケンブリッジ大学図書館、古典学部図書館、考古学科図書室を文献調査のために利用しただけでなく、必要に応じてオックスフォード大学ボドリアン図書館、ロンドン大学古典学研究所図書室も利用した。イングランド北部のハドリアヌス長城関係の遺跡を訪れ、とくにウィンドランダ遺跡では、発掘を推進しているロビン・バーリー博士に面会して発掘と研究の現状を聞き、博士の案内で遺跡をすべて観察した。この成果は3月刊行の『西洋古代史研究』第3号で論文として発表した。
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