研究概要 |
本年度はこの研究の第2年目であり、まずこれまでの成果を属州ブリタンニア(ブリテン島)中心にまとめ研究書『海のかなたのローマ帝国--古代ローマとブリテン島』を岩波書店より刊行した。ついで、研究の重心をブリテン島から大陸に移し、今日のドイツ、ベルギー、オランダ、北フランス、スイス、そしてオーストリアといった国々に相当する地域に焦点を当てて、本格的な研究を開始した。この研究の手始めとして、夏季にドイツで現地調査を実施したが、調査の拠点をケルン大学に置き、ケルン大学の古代史教授で、ローマ帝政史の権威であるヴァルナー・エック教授の協力を得ることができた。この調査では、「都市化」の問題について、ライン川沿いでかつてのローマ人の拠点都市であったケルン市における遺物調査などをおこない、アウグストゥス帝時代のゲルマニア征服の問題についても、カールクリーゼの「トイトブルクの森の戦い」古戦場跡の調査などで最新の情報を入手することができた。これらの調査成果と、碑文史料の分析や研究文献から得た情報をもとにして、本年度内に数編の論文やエッセイを執筆したが、その内の論文2編を今年度中に公刊することができた。なお、本研究と関連の深い研究プロジェクトとその国際会議を別途実施した関係上、とくに国際会議で本研究の成果をいかすことができたことも特記しておきたい。これについては、英文の成果報告書Material Culture, Mentality and Historical Identity : Understanding the Celts, Greeks, Romans and the Modern Europeansを本研究代表者自身が編集・発行し、国内外の研究機関に送付した。
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